がん治療の分類

がん治療の分類
がん治療は大きく「手術療法」「化学療法(抗がん剤治療)」「放射線療法」の3つに分けられます。近年、これらの3大治療に加え「がん免疫療法」が第4の治療として注目されています。また最近の医学の分野の中には、がんと診断された早期から、精神的な苦痛も含めて、受容・判断・治療・療養・回復・回復後の日常生活に至るあらゆる過程の中で生じる自覚的・無自覚的な苦痛、およびその影響のよる損失や不利益に対して、総合的な「緩和ケア」が確立され、さらに発展しています。
それらを含めると、現在のがん治療は、「手術療法」「化学療法(抗がん剤治療)」「放射線療法」「免疫療法」そして「緩和ケア」の5本柱があるということになります。
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  • 参考サイト
日本緩和医療学会:http://www.jspm.ne.jp/
日本緩和医療薬学会:http://jpps.umin.jp/
手術療法
がんを外科的に切除する局所療法です。がん組織だけではなく、周囲の組織やリンパ節を同時に取り除き、がんの広がりを予防するのが一般的な方法です。がんそのものを取り除くので、直接的な効果を得ることができます。
一方で、切除した部位によっては臓器や体の機能が失われることがあり、手術後の生活の質(Quality of Life: QOL)に影響を及ぼすことがあります。また、基礎疾患や高齢のために全身麻酔・手術に耐えられない身体状態の場合は、手術が困難になります。
近年、身体への影響を最小限にできる手術方法(例:腹腔鏡下、内視鏡手術など)や、切除範囲を小さくしてQOLや後遺症を低減できる方法(術前化学療法による腫瘍の縮小)も発達してきています。
化学療法(抗がん剤治療)
主に抗がん剤(細胞障害性のある本来の抗癌剤、および新しく登場した分子標的薬)を用いてがん細胞を死滅・増殖を抑制し、がんを破壊・縮小させる治療方法(全身療法)です。点滴・注射・内服などによって抗がん剤が投与され、血液を介して全身をめぐることで、ごく小さな病巣や転移にも効果を示します。しかし、正常な細胞にも抗がん剤は作用するため、副作用が現れ苦痛を伴うことも少なくありません。
一つの方法のみに頼ることが時として大きな損失につながる、というのは、細胞障害性の抗がん剤一辺倒に偏った過去に私たちが痛い思いをして学んできたことです。ひとつの分子標的薬では「悪さ」を完全に抑えられないこと、死滅させることが不可能なことが分かった、今、より総合的な理解と判断に基づいた、統合的で賢明な選択をすべき時代になりました。
化学療法も、手術療法や放射線治療と上手に併用することで、再発予防やQOL向上につながるといわれています。また、外来化学療法や内服治療の発展、副作用が最小限に抑えられる薬剤やシステムの開発、最適な薬剤の選択を可能にする癌遺伝子検査法の発達によって、それらを上手に利用することで、よりよい質の生活レベルを維持しながら、最高の効率の抗がん剤の治療を受けるということが可能になってまいりました。
本来の抗がん剤は、正常・癌を問わず、どの細胞にも区別なく遺伝子の複製や機能を直接邪魔したり、細胞の活動を障害することで、そういった障害により弱い癌細胞により強くダメージを与えるお薬です。それらにはシスプラチンなどのプラチナ製剤、タキソテールなどのタキサン類やビンカアルカロイドのような微小管作用薬、5FUやその誘導体などの塩基誘導体、エンドキサンなどのように遺伝子にくっついて歪めて複製できなくするアルキル化剤、エトポシドのようにDNA合成する酵素を阻害するトポイソメラーゼ阻害剤、など、働き方によって多くのグループがあります。
「分子標的薬」は、病気の細胞(がん細胞など)の表面にあるたんぱく質や遺伝子といった「分子」に選択的に結合することでがん細胞の制御をめざすおくすりです。現在は小さな分子のものから大きな分子のものまで数多くのさまざまな分子標的薬が用いられています。
これらに共通して言えることは、抗がん薬の多くは、がん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃してしまうので、重い副作用を発現させることも決して少なくないということです。癌治療がこのように発展するまでの従来のがん医療はがん細胞を死滅させる作用によって治療の効果を得ることで満足してきましたが、大きな犠牲を払ってきたのも事実です。がんに関する研究が進み、がん細胞が増殖や転移をするのは、癌細胞自身が酸素や栄養のない環境に苦しくなってもともとあった場所からなんとか子孫を残そう、外に出よう、そこから逃げようとして、普通は隠れていて発現しないような遺伝子や伝達物質が異常に増えて、「悪さをする」スイッチを死に物狂いで押しまくります。そういった事情が判明したので、「悪さをする」スイッチを押させないように、そんな遺伝子や伝達物質を制御するほうが、毒性も低くていいのではないか?という期待で、分子標的薬が今盛んに使われるようになりました。しかし、また、一方で、「悪さのし方」には非常に多くの種類があり、それを止めると、同じメカニズムで動いている正常の体の機能もダメージを受けることが問題になり、また、その費用の高額さも、社会的な問題になってきました。
放射線治療
がん細胞は正常細胞と比較して、放射線の影響を受けやすいという性質があります。その性質を最大限に利用し、がんの存在する場所に高エネルギーの放射線を照射(外照射)したり、管・針・粒状の形をした容器に放射線物質を密封しがんそのもの、もしくはその周辺の体内に埋め込む(密封小線源治療)ことで、正常細胞へのダメージを小さく抑えながらがん細胞を死滅・増殖を抑制する治療方法(局所療法)が広い意味での放射線治療です。
最近の進歩した放射線治療では、身体の機能や形態を損なわない、手術療法が困難な人にも適応できる、など患者の負担やQOLへの影響が少なく、かつ高い治療効果を得ることが出来ます。治療法の発展、機器の開発で安全かつ効果的な治療方法が数多く生まれて、次々と確立されてきています。また、放射線治療は侵襲の低い手術や化学療法等と上手に併用することで、困難な状態であっても治癒につなげ、そして再発を予防し、かつ、生涯のQOLを保つことが期待できる治療法です。
がん免疫療法
体の中に侵入した異物を排除するために、誰もが生まれながらに「免疫」という能力を備えています。この能力を高め、がんの治療を目的としたものを「がん免疫療法」と言います。
がん免疫療法は、ほんらい自分の体が持っている自然の免疫力を活かす、あるいは腫瘍などによって損なわれた免疫力を回復させる治療法で、今までの医学の実践のデータからはさきにのべた3大治療と比べて強力な即効性はないと考えられてきましたが、より自然に近く、そもそも免疫力自体が自分の細胞の働きなので、抗がん剤のような毒性はなく、それを正しく強化できた場合には、例えば腎臓を移植した時と同じように、あるいは鍛錬した筋肉が強靭さを保つように、その効果が長期間持続するという利点が期待できます。体力があり免疫力が衰えていない病気の初期に行った場合にはより強力で完璧な治療効果が期待できるという野心的な見方もあります。
がん免疫療法の研究は1970年代から盛んになり、1990年代までは体全体の免疫機能を上げることを目指し研究・開発に取り組まれていました。その成果ではまだ大きな有効性が確認できませんでした。その後がん細胞を攻撃する免疫細胞のメカニズムが詳しく科学的に解明され、その成果を活かした様々な免疫療法が現れ、期待された以上の臨床効果が確認され、そうして一部は医薬として認可され、免疫療法の役割が社会で見直され、その普及に拍車がかかっています。
がん免疫療法は、自分の免疫細胞を培養してもう一度体に戻し免疫力全体を強化させる免疫細胞療法(例:樹状細胞ワクチン療法)と、免疫抑制を解除する治療(例:免疫チェックポイント阻害剤による治療)に分類できます。免疫抑制を解除する治療は、直接がん細胞を攻撃するのではなく、本来ならばがん細胞を攻撃する役目を持つリンパ球にかかっているブレーキを解除し、本来の攻撃性を発揮させる治療方法です。
緩和ケア
緩和ケアは「生命を脅かす疾患により問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティー・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を改善する」アプローチです(WHO 2002年)。
がんと診断され療養をしていく過程で生じる様々な苦痛の状況に応じて、苦痛を軽減し、治療を受けながらでも、「その人らしく」生活できるようにサポートを行うのが「緩和ケア」です。
実際に私たちが提供する緩和ケアの取り組みの一部を課題にわけてご紹介いたします。
  • 診断直後の不安・落ち込み
    担当医・看護師・心のケアの専門家が協力してサポートいたします。
  • 治療前からの痛み
    担当医や看護師、緩和ケアチームが協力して治療やアドバイスを提供いたします。がんの治療の前後に関わらず、十分な鎮痛のために必要な治療を行います。
  • 放射線や化学療法の副作用
    担当医や看護師、放射線治療医や緩和ケアチーム、歯科医師などが協力して、治療やアドバイスを行います。栄養士が食事の内容や調理方法について適切なアドバイスを提供いたします。
  • 手術後の痛み
    担当医や看護師、麻酔担当医、緩和ケアチームが協力して治療や適切なアドバイスを提供いたします。
  • 再発や転移による症状   
  • 入院中・通院中にともに、担当医や看護師、緩和ケアチーム・緩和ケア病棟の担当医・栄養士などが協力して治療やアドバイスを提供いたします。在宅療養では、訪問診療の担当医が訪問看護師とともに治療やケアを提供いたします。緩和ケアチームにおける心のケアの専門家の視点から治療やアドバイスを提供いたします。 
  • 医療費の問題、仕事や生活の不安、転院や自宅での療養についての不安  
    入院中、通院中とも担当医や看護師とソーシャルワーカーや緩和ケアチームのメンバーが協力してサポートいたします。在宅療養では訪問診療の担当医や訪問看護師、ケアマネジャー、市区町村の担当者がサポートいたします。
  • 自分の存在や生きる意味についての悩み、不安や気分の落ち込み、家族の心や気持ちの問題   
    入院中、通院中とも担当医や看護師と心のケアの専門家が協力してサポートいたします。在宅療養では訪問診療の担当医が訪問看護師などとともにサポートいたします。