陽子線治療

yousshisen-zenkei.jpg
saisei.png (動画)  Precious life-医師達の情熱ファイル- #13 陽子線治療 放射線治療医 岸 和史(2019 UHB北海道文化放送)


1.陽子線治療とは
放射線治療にはこれまでX線や電子線を用いた治療が主流でしたが、近年、周辺の正常組織への影響を低減しながら、高い治療効果が見込まれる粒子線による治療が注目されています。
粒子線には「陽子線」と「重粒子線」という2種類が医療用に使われており、当院では陽子線を用いた治療を提供しています。
2.陽子線の特徴(従来の放射線治療の違い)
放射線治療は放射線がもっているエネルギーをがん細胞に与えることで治療効果が生まれます。
従来の放射線治療(X線)は下図1のように人体に入った直後に一番線量が大きく、体を通過する間に徐々に小さくなります。
陽子線はブラッグピークという、人体に入った直後は放射線量が小さく、あるところで急激に大きくなり(ブラッグピーク)、それ以降に到達しない特性があります。
この放射線量が最大となるブラッグピークを腫瘍に一致させるように調整することで、周辺の正常組織への影響を小さくしながら腫瘍に大きな放射線線量を照射できるため、従来の放射線治療に比べて高い治療効果が期待できます。
そのため陽子線は体表面から深い場所に位置したり、放射線に弱い重要臓器に囲まれているような腫瘍に効果的です。

youshisen-zu1.png
3.当院導入装置の技術(ペンシルビーム&スキャニング)
当院はIBA社の陽子線治療装置「Proteus One」を導入しています。
この装置では陽子線を下図2のように約3-4mmの「ペンシルビーム」と呼ばれる細いビームで、腫瘍を塗りつぶす(スキャンする)ように照射します(スキャニング)。
このペンシルビームによるスキャニングを用いた強度変調陽子線治療(IMPT)により、複雑な形状の腫瘍でも図3のように何層も重ねて立体的に陽子線を照射することで、周りの正常組織への影響を極力抑えながら、腫瘍には効果的な線量を投与できます。


youshisen-zu2-3.png
4.診察から治療の流れ
かかりつけの医療機関からの診療情報提供書や画像データをもとに当センターにて診察を受けていただきます。
必要に応じて追加の検査を行い病状を把握し、陽子線治療の適応となるかを複数の診療科の医師が総合的に検討・判断し、陽子線治療の適応となる場合は治療の準備を進めていきます。

従来のX線治療同様に、毎回同じ姿勢を再現できる様な固定具を作成し、固定具を装着した状態で治療計画用のCTを撮影します。病変の種類や部位によってはMRIが必要になることもあります。
これらの画像をもとに陽子線を当てる角度や深さ、線量や照射回数などの治療計画を立てます。立案した治療計画が実際に人体に照射しても問題無いかの精度検証を医学物理士、放射線治療技師により実施し、医師の承認を経て陽子線治療が開始となります。
5.治療にかかる時間・期間、通院について
治療部位や範囲によって異なりますが、1回の治療時間(装置に寝ている時間)は概ね30分で、治療期間は平均で26回程度です。(当院の治療実績より
通常、外来通院で治療を提供しておりますが、病状などによっては入院をお勧めする場合があります。
治療後は定期的に画像検査等を行い、経過観察します。
遠方よりお越しの方は、経過観察を自宅近くの医療機関にお願いする場合があります。
6.適応疾患
陽子線治療の適応については、公益社団法人日本放射線腫瘍学会(JASTRO)の治療方針に基づいて判断しています。
保険診療の適応疾患
適応症 組織型等
頭頚部腫瘍 鼻副鼻腔扁平上皮癌、 頭頚部悪性黒色腫、 嗅神経芽細胞腫
腺様嚢胞癌、 唾液腺腫瘍、 頭頚部非扁平上皮癌
泌尿器腫瘍 前立腺癌
骨軟部腫瘍 脊索腫、 軟骨肉腫、 骨肉腫、 その他の稀な骨軟部肉腫
肝胆膵腫瘍 肝細胞癌(長径4センチメートル以上)、 肝内胆管癌、 局所進行膵癌
消化管腫瘍 局所再発性直腸癌

先進医療の適応疾患
適応症 組織型等
脳脊髄腫瘍 膠芽腫、神経膠腫(星細胞腫・乏突起膠腫)、その他の稀な脳腫瘍
頭頚部腫瘍 頭頚部扁平上皮癌
肺・縦隔腫瘍 限局性肺癌、局所進行非小細胞肺癌、縦隔腫瘍
消化管腫瘍 局所進行食道癌
肝胆膵腫瘍 肝細胞癌(保険適応外のもの)、胆道癌
泌尿器腫瘍 膀胱癌、腎癌
転移性腫瘍 転移性肺腫瘍、転移性肝腫瘍、転移性リンパ節

自由診療
保険診療・先進医療の適応外であって、陽子線治療の実施に医学的意義がある症例については、当院のキャンサーボード(陽子線治療適応判定会議)にて承認の上、自由診療による陽子線治療を受けることができます。


保険診療、先進医療については適応は病名に加え転移等の状況も定められているため、病名のみでは陽子線治療の適応判断は致しかねます。病歴や様々な検査結果を確認・検討する必要があるため、 ご不明な点はお気軽にご相談ください。

7.陽子線治療にかかる治療費用
保険診療
保険点数に基づき算定します。
患者様本人が加入する保険の種類により1~3割の自己負担となります。
(保険診療は高額療養費制度の対象です。詳しくは保険証を発行している保険者にお問合せください。)
 
先進医療
陽子線の照射にかかる「陽子線治療技術料」は290万円(非課税)で全額患者様側の自己負担となります。この自己負担は民間保険の先進医療特約等の加入がある場合、保険会社が契約の範囲内で当該技術料を支払います。
それ以外の診察や検査の費用は保険診療として行い、1~3割の自己負担となります。
75sensinsougaku.png
 
※先進医療としての陽子線治療における「陽子線治療技術料」については、民間保険の先進医療特約の給付対象となり、各保険会社の先進医療に係る給付金直接支払いサービスに対応しています。保険会社ごとに対応方法が異なりますので、詳しくは事前にご加入の保険会社にご確認ください。
自由診療
上記の保険診療、先進医療にあてはまらない疾患は、陽子線治療技術料(290万円+消費税)に加え、診察・検査等の全ての金額が自己負担となる自由診療として治療を受けることができます。

※各種保険制度の適応は病名のみでは判断致しかねます。病歴や様々な検査結果を確認・検討する必要があるため、 ご不明な点はお気軽にご相談ください。 


7.jpg